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『設計料無料!』  『無料コンペ』 の実体



某ハウスメーカーや工務店に直に建築を依頼するときに『設計料無料!』
という見出しを見かけ、無料でプランを作成しますと言われます。
お得な気分になる方もいらっしゃると思いますがこれにはカラクリがあります。

その会社の設計部員が給料を拒否しているということでしょうか?
その会社の下請けの設計事務所が凌ぎを削った生活をしているのでしょうか?
(後者はあながち間違ってはいない?)

設計料は多額な工事費用を考えれば少額に値するために、
施工業者は特命で『工事を受注するため』に営業戦略としてこれを行うのです。
結局この受注経費はその後に工事を依頼したクライアント自身が負担しているに過ぎません。

これは業界的な話をすれば工事費用を上げてしまう要素の一つになっているものです。
例えば5社からプランを5案出していただいたとしても実現するのは1案です。
4案は経済的には無駄な人件費となっていることになります。
その経費は会社を経営していくうえで、工事費用にのしかかることは当然であり、
工事がとれる確率(1/20件程度)を考えると大変なコストになっている筈です。


しかしそれ以上に、工事業者を設計時点から1社に限定することが問題であると考えます。
(但し何回かやり慣れた信頼関係の深い工事業者は除きます)
契約後の設計や工事のプロセスはリハーサルできないばかりか、
他社との比較は既にできない状況になってしまいます。

また着工以前の設計期間の段階で第三者の目が入らないことになります。
これは費用面のみならず、施工面でも大きなリスクを負う可能性があるのです。

・予算を伝えていたにも拘わらず契約後の設計完了時に費用が予想よりも大分上がってしまった…
・契約後の増減のチェックは誰が行えるのでしょうか?
・契約後の実際に建つ家の性能は客観的にどのくらいのレベルなのだろうか?
・その仕様通りに工事されているのだろうか?

このような不安を抱えながらも信用して前に進めざるを得ません。

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近年、ネット上での設計コンペのサイトが蔓延っており、設計事務所を探している
クライアントにとっては理想的な環境が整っているかのように写ります。
純粋に設計事務所選定のための場所であればまだまともなサイトですが、
そのサイトが工事会社主催の場合や工事会社を特命で斡旋するところは注意が必要です。

前述と同じようなリスクを負う可能性が生じるだけでなく、
主催者と工事会社の間で利害関係が発生します。
それが業務上適正な範囲であるかどうかが重要ですが、
工事費用の諸経費に変わってクライアントがその経費を負担する可能性があるのです。

そして、仕事をいただくという立場上は設計事務所も主催会社の不利益になると
思われることを言ったり行なったりすることはタブーになりがちです。
このように完全なクライアントの利益となる立場がとれない可能性が生じます。
設計内容が理想的であっても工事費用はその会社の言うことを信用しなければならないことと、
技術的に施工能力のある会社かどうかを果たして見極められるでしょうか?

一生に一度の家づくりなのでよく分からないままに、
『設計+工事』
と一貫して考えてしまうことが一般的です。

しかし効率よく家づくりに投資するためにも諸外国では一般的な考え方である、
『設計』, 『工事』
と視点を2つに分けてとり組むことをお勧めします。



<蛇足>
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近年、戦略的に全国展開したメーカーや家づくりのサイトに、
建て主の依頼先がシフトすることで、生産性に特化した規格建物が街に増え、
昔ながらの技術のある工務店や職人さんのなかには「メーカー下請けの仕事しかない」
と士気を失い、この悪循環を嘆く方もいらっしゃいます。

また、営業的に無料で設計を行うメーカーや施工会社により、
工事を請けずに純粋に設計と工事第3者チェックを行っている我々建築士が
設計のみでお金を得ることが困難な状況を生み出しているようです。

設計が下請けで行われるとしたら、国家資格である建築士の肝心の効力が失せてしまう
ということを、国家や各社団法人の機関は真剣に考えなければなりません。
姉歯事件は当然モラルの問題でありますが下請けとしてしか仕事を得られなかった、
この業界の悪循環構造にも問題があるのではないかと感じました。

国家資格を与えたにも拘わらず建築士全員に定期的に試験をおこなうことへの不自然さを、
建築士の大多数は感じております。これらは結局は多額の財源の確保ではないかと…
確認検査とは別に「住宅性能評価制度」をつくり評価機関を全国に200箇所造る(天下先?)
ことや追試を施行することよりも、「設計」と「施工」を分けることの方がシンプルかつ
欠陥住宅対策として効果抜群であると考える建築士は多い筈です。
果たして何のための建築士制度なのでしょうか?

それにしても、この性能評価で合格を受けている姉歯物件のことや、
亡くなられた意匠設計事務所の報道が殆ど無かったことにも疑問を感じます。
よろしければご意見をお聞かせください。
jyuarch@y4.dion.ne.jp