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家は建てるもの? 購入商品?




日経の某雑誌でも昨年末にとりあげられていましたが、
近年モンスタークレーマーが増加しているといわれます。

お任せ = 信頼      という過去の図式から、
お任せ = 責任回避  という図式に変わっているようです。

都合の悪いところでは「素人(お客様)」になり「プロ」を突く。
そこには「建て主」というプライドや責任はもはや介在しません。
(本当に常識を知らない場合もあるようですが…)

これには近年の食品や電化製品等を購入するような、消費者としての権利意識の高まりという
時代背景も影響しているようであり、建て売り住宅やホームメーカのような商品化住宅
ではない注文住宅に対しても、この意識をもつ方が増えていると考えます。
(意識をもつというよりも全く疑問視していないということかもしれません)

しかし、対価となる実体が実在しない段階での「見込み契約」という特殊な性質上、
この意識をそのままもちこむことには限界があります。
ここではお互いの信頼関係が最も大切なことに変わりありません。

昔は、任せる(依頼する)ことは相手への信頼と共に、
いざという時には、相手の行為に責任をもつ気概を示すことでもありました。
これからの「お任せ」には、こちら側からの充分な説明が前提でならねばと考えました。


− 均一で便利な工業製品に囲まれて育った世代 −

製品的均一な綺麗さに最も価値を求め、規格仕様で充分満足できるのであれば、
基礎工事以外の大半を工場規格の量産材を用いるメーカー住宅に依頼するか、
建売住宅を商品感覚で購入するのが無難とも思えます。

しかしながらオリジナリティに拘るのも今の世代の特徴です。
充分に設計された注文住宅は、空間に質の違いとして明白に表れます。
そのような質感も知る非常に欲張り?な世代です。

建物に自然素材や規格外のオリジナリティを望み、
車や家電製品のような量産品的仕上がりを要求します。
この矛盾を請ける工務店や我々は確かに大変神経を遣います。

オーダー部分の多い注文住宅は現場製作を多く行わねばなりません。
近隣との関係や道路づけ、広さ等の条件は毎回異なり、
一般的に都市に近いほど建築する敷地条件は悪くなります。

竣工まではその敷地がその家のための専用工場でもあるといえます。
「専用工場」とはすこし聞こえが良いですが、
仮設工場よりも条件の悪い「バラック」が現実で、
実験データのない一発勝負というリスキーな現場工場です。

製品として納得して支払うというのは消費者にとっては当然のことですが、
そこに個人の感覚の差や欲、造る側との温度差が絡み問題を複雑化させます。

建物は雨、風雪、地震、紫外線、虫害等々の自然との対峙又は共存しながら
年月を経ていかねばなりません。
工業製品のように安易に使い捨てはできない生涯の大変大きな買い物です。

竣工後、特に数年間は工業製品とは対照的に意外と問題が生じやすいものです。
木やコンクリートが完全に乾くまでの構造体自体の挙動や、
一年を通した季節の気候(気温や湿度)による挙動、
地震や強風による振動や揺れなどにより建付が悪くなったり
クラック等が生じる可能性もあります。

これらは工務店との関係が健全であれば修繕補償していくものですが、
関係が悪化している場合は、より問題がこじれる要因になりかねません。

我々団塊ジュニア世代は次々と新しい製品がででくる世の中に育ち、
欲しい物や便利な製品に概ね囲まれて育ちました。
我慢することには極端に弱い世代かもしれません。

竣工に至っては、生活に必要なものを一新したくなる気持ちも分かります。
人によっては次から次へとお金がかかることで不安になり、
支払いを抑えられないかという気持ちからクレーマーに転じる場合もあるようです。

工務店側も必死です。厳しいこの時世下で相見積盛りを強いられ、
余裕のない請負金に工期というリスクを抱えていることで、
気持ちのゆとりが無く、対応に影響してしまう場合もあるかもしれません。

消費者にとっては、「見込み」という大変リスキーな買い物です。
そのために、100%の納得ができないかも知れません。
しかし、変更や追加等に対応してくださったり、より良くやってくれた部分、
また見返りとは別の次元で、より良い仕事をしてくれる職人さんもいます。

欠陥住宅を造ろうと思って現場にいる人はいません。
精一杯エネルギーや時間をかけておこなった行為に対して、
一方的な値切り交渉や支払い拒否をする行動はとても悲しいことです。
双方が自己主張のみでは平行線であり互いに終わりのみえない後悔が続きます。

個々は一人の生身の人間です。どちらが上でも下でもなくお互いが敬い合い、
信頼関係のなかで総合的な視野でバランス感覚をもって折り合っていくこと。
双方が相手の立場になった気持ちで話し合いのできるゆとりをもつこと。

これらはとても大切なことだと感じますが、専門家として新しい時代や世代を読み、
過去の失敗を経験としてこれからに生かすことは、クライアントの不安を少しでも
やわらげることに繋がるに違いありません。